2014年からボスニア・ヘルツェゴビナに出入りし、現地の様子を撮っている。彼の地は、旧ユーゴスラビア崩壊にともなう戦火が1992年に飛び火。以後、首都サラエボは4年に渡って敵対勢力に包囲され、95年の紛争終結までに12,000人が死亡し、50,000人が負傷したと言われている。
写真の男性モハメド・ガフィッチ氏は、ボスニアを代表する登山家で、紛争当事は特殊部隊の司令官を努めた。快活聡明な方で、私の写真プロジェクトにもご理解いただき、2016年にはかつての戦闘の最前線を案内していただいた。
この写真の場所は、サラエボ冬季オリンピック(1984年)に向けて建設されたボブスレーの競技施設。市南側のトレべヴィッチ山にある。現在コースは廃墟と化しており、グラフィティアートの部分は数年前に折れて地面と接するようになった。時々、地元の若者や観光客に遭遇する。
写真は天候のせいもあり、やや重たい雰囲気となっているが、街全体がこんな雰囲気かというとそうではない。市の中心部には近代的なビルが建ち、旧市街にはオーストリア=ハンガリー帝国時代の瀟洒な建物も多く残る。
市民も明るく快活な人が多い。個人的にゴツい写真を好むので、当ブログはボスニアの観光案内とはならないかもしれないが、サラエボは私にとって世界で最もホッとできる大切な場所であり、いささか不器用ではあるが、彼の地の魅力を一人でも多くの方にお届けすることができたらこれ幸い。