旧ユーゴの旅11 – ザグレブiPhone事件

※今回は写真が多くてすみません。

プリトヴィツェからザグレブに戻り、夜の街をぶらぶらと歩きながら宿へ。途中スーパーマーケット「KOMZUM」で食料と酒を。惣菜コーナーに足を運ぶと、女性の店員さんが応対してくれて、旨そうな肉塊を切り分けてタッパーに詰めてくれた。笑顔が素敵な人だった。

宿に戻り夕食を取り始めるとイトー君が「あれー、iPhoneどこいったっけ」と。ズボンのポケット、リュック、宿のロッカー、どこを探しても無い。無い。無い…。まずい。幸い「iPhoneを探す」機能を有効にしているとのことで、ラップトップで探せる可能性が。早速、イトーくんのアカウントでiCloud.comにアクセス。「iPhoneを探す」をクリックするとザグレブの広域地図が。良かった。一応このエリアにはあるようだ。程なく、ピンがザグレブのバスステーション付近にドロップ。バスの中か、あるいはバス会社の事務所か。念のため、画面の地図をスクリーンショットに収め自分のiPhoneに転送。その後すぐに3人でバスターミナルへ。確か22時ごろだったと思う。

歩いて20分ほどでターミナルに到着。足早に窓口に向かい係の人に要件を伝えると、どこからのバスで何時頃にザグレブに到着したのか聞かれたので、17時頃プリトヴィツェからの乗車でザグレブには21時ごろに着いたと説明。念のため、「iPhoneを探す」のスクリーンショットを見せ、この付近にあることは確かであることを伝えた。係の人は一切表情を変えることなく、到着電話の受話器を取りどこかに問い合わせを始めた。程なくして「今のところ事務所には届いていないようです。該当のバスの運転手は既に帰宅しているので、明日の朝10:30にバスの前で待っていてください。ナンバーはXXXXです」と。すぐ近くにiPhoneがあるのになんだかもどかしいが、これ以上ここに居ても仕方がないので、バスの正確な位置を確認してから帰ることに。

表に出てバスの駐車場に向かうと、該当のバスは出入口のすぐ近くに駐車されていたのですぐに発見できた。バスの特徴が自分の記憶と異なっていることに驚く。人間のイメージ記憶なんてあまり当てにならない。ともあれ、明日の朝10時半にここにくればiPhoneがイトー君の手に戻る。正確な場所が特定できたので、安心と言えば安心なのだが、きちんと回収するまではやはり不安である。ワンチャンスなので、念のために手紙を書いてバスのワイパーに挟んでおくことにした。

ところで、ザグレブのバスターミナル周辺は広範囲に渡って小便臭い。たぶん、近くのバーで飲んでいて、小がしたくなったら適当な場所で闇夜に紛れてシャーっとやっているのだろう。インドのタージマハール周辺ほどではないが、なかなかの臭気。息苦しさを感じつつも、バスのすぐ横で手紙をしたためる。10月のバルカンは雨が多いと聞いていたが、しばらくの間雨が降っていないのかもしれない。

翌朝、10時にバス停へ。該当のバスは昨晩のままの位置に停まっているが、ワイパーに挟んだ手紙が無い。もしや、酔っぱらいが持ち去ったか。少し不安である。相変わらず小便臭い所だが、運転手に会えるのは1回こっきりなので、ここから離れるわけにはいかない。イトー君とよもやま話しをしながら時間を潰す。そして10時半、遂に運転手が現れた。白髪交じりの渋い顔をしたおじさん。すぐに歩み寄って挨拶をし、iPhoneのことを尋ねる。すると怪訝な眼差しでこちらをじろり。朝イチで面倒事に巻き込まれ不機嫌になってしまったのだろうか。重苦しい沈黙。しかし、次の瞬間おじさん運転手が「ふっふっふー」含み笑いをしながらゆっくりとダッシュボードに手を突っ込み、ニンマリとした表情で手に掴んだものを差し出して来た。iPhoneと手紙だった。私もイトー君も思わず「おぉぉぉぉ〜!」と大声を上げてしまった。なんと、手紙を読んで事前に車内を探してくれていたのだ。さっき見せた怪訝な眼差しはおじさんの演出。クロアチア人は粋だね。おじさんに深々と頭を下げ、お礼を述べてその場を後に。その後、すぐに近くのバーに入り「Ozujsko」ビールで乾杯。iとにかく無事に回収できて本当に良かった。


旧ユーゴスラビアの旅4 – サラエボからザグレブへ

[写真1] サラエボのバス乗り場よりクロアチアのザグレブに向かって出発。いきなり砲撃で破壊されたと思われる建物が。

[写真2] 味のあるマンション。どことなく社会主義的な雰囲気が。旧ユーゴ時代に建てられたものだろうか。

[写真3] かつてのセルビア人支配地域「グルバビッツァ地区」の近く。紛争時は最前線だった場所。オシム監督はグルバビッツァに住んでいたのだとか。大きなサッカースタジアムもある。

[写真4] しばらくするとほのぼのした田舎の風景に。護岸工事のなされていない川が美しい。

[写真5] 国政選挙が近いためか、各地で政治家のものと思われるポスターが。サラエボでは、ボスニア・ヘルツェゴビナ初代大統領アリヤ・イゼトベゴヴィッチの息子、バキル氏の巨大な看板をいくつか目にした。

[写真6] 乗車したバス。なかなか快適でした。トイレはパーキングで済ますことになるので、水の飲み過ぎには注意。

[写真7] バスから目にしたものを書き取るイトー奥さん。さすがはグラフィックデザイナー。

[写真8] イトー君の足元。断りなく本人の写真を載せちゃまずいので足だけの登場。

[写真9] なんと、地中からガードレールが生えてきてるじゃないか。

[写真10] ボスニアの自然、美しい。